私の歴史~卒業編③

彼女が手紙をくれたので、僕は勢いづいて彼女と会う約束をとりつけた。

 

その会う予定の日、僕は朝からソワソワしていた。

夕方に会う予定だが、まだだいぶ時間がある。

 

しかし、困ったことが一つあった。

お金が無いことだった。しかも全く。

どのくらいかというと、行きの電車賃がかろうじてあるぐらい。

 

いくらなんでも、これでは会いに行けないだろうと思った。

連絡先は聞いていたので、急用ができて会えなくなったと言おうかと思った。

しかし、約束しておいてそんなことを言うのも嫌だった。

そこで腹を決めて、恥を忍んで会いにいくだけ行こうと決めた。

一目会って、話ができればよい。そのまま正直に事情を話して帰りは歩いて帰ってくればよい。

 

僕は家を出て電車にとび乗った。切符を買ったらほぼお金は無くなった。

地下鉄は繁華街を過ぎていった。

長いことここに住んでいるが、地下鉄でここまでくるのは初めてだった。

地下鉄というのにこの辺りでは地上を走っていた。

 

駅に着いて改札に行くと、彼女の姿が見えた。

春めいて寒さが少し緩んできた北の大地で再び彼女に巡り合うことが出来た。

久しぶりに見る彼女は記憶通りのままにそこにいた。

会いに来るだけ来て良かったと思った。

 

僕は彼女の前に立った。

「こんにちは。お久しぶりです。」、とか言ったのかな。

「それで、実はお金が無くて。」、と唐突に切り出した。

すると、彼女も困ったのか、

「そっか、じゃ私が少しだけ持ってるから買って部屋のみしますか」

と言ってくれた。

良かった、と思った。とりあえず、もう少し一緒にいられると。

 

お酒とおつまみを買って残雪の歩道を彼女について歩いて行った。

しばらく裏道を歩くと一棟のアパートに着き、その階段を登って行った。

 

何でも彼女の旅人の友達で、夏はここに住んで働きながら旅人をして、冬は仕事がなくなるので内地に行って出稼ぎしている人が、冬はどうせ空いてるから旅の住処にしていいよと鍵をもらっているんだとか。

どうも彼女は友達の輪が広いようだ。僕とは違って。

 

そのアパートの一室に彼女の後ろから、お邪魔します、と入って行った。

 

④へ続く